二度目の恋
少し開きそうになったが、ドアの先端が詰まって開かない。もう一度、今度は体中の力を最大に振り絞ってドアにぶつかっていった。すると、ドアはもの凄い音を立てて勢いよく開き、愁もそのまま部屋のがらくたの中へ投げ出された。愁の体にいろいろな物が乗ってきたが、その物を退かして起きあがった。この部屋は月の光も届かないところにある。廊下から漏れるほんの少しの明かりで物の陰が出来る。かなりながらくたばかりで、埃も充満していて咳き込むほどだ。どうやらこの部屋は物置部屋だったらしい。<やはりこの部屋にもいない>愁は思った。<じゃあ、何処にいるんだ?隣の部屋か?>その時、後ろでバタン!と音がした。その瞬間、愁は暗闇の中へと埋もれた。後ろを向くとドアは閉まっている。愁の体は凍り付いた。埃と共に暖かい空気が上昇し、暗闇の中から一点の光が現れる。それはやがて微かな少女の姿だと気づいた。少女は全身に光で包まれている。すらーとした透き通るように細い髪をしており、すらーと透き通るような白いドレスに身を包み、すらーと透き通るような繊細な目をしていた。愁はジッと見た。少女の目に釘付けになり、身動きが出来なくなっていた。やがて少女は愁へ歩み寄ってきた。愁は恐怖を感じ咄嗟に目を閉じると、少女は愁の体の中を通り過ぎていった。
 そして愁はゆっくりと目を開けると、先程の場所に立っていた。空き家に見入って吸い込まれた場所だ。亨はもう随分前を歩き、家の玄関に着いて中に入ろうとしていた。リュウも玄関に迎え出ており、愁も亨の側に駆け寄った。そして、一緒に家の中に入っていった。
 静かな夜が過ぎ、また梟が誇らしげに鳴いていた。
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