二度目の恋

第十章

 「キャッ!」美月は思わず、声を出してしまった。「なに?」愁は壁に寄りかかって言った。「虫!虫!」美月は這うように、後退りした。「シー、声、大きいよ。分かっちゃう」中腰になり、愁は窓の外から部屋の中を覗いた。「何が起こるの?」美月は聞いた。「シッ!きっと、面白いことが起こるよ」部屋の中は静まり返り、何か起こる気配さえ伺えなかった。
「ちょっと、まだ早かったか……」
「何?何が起こるの?」
「いいから、お楽しみ!ちょっと待とう。ここで、お話しよ」
 いい天気だった。この家も日当たりはいい。愁と美月は壁に寄りかかって座った。最高の朝日が、まるで二人を包むようだ。雲ひとつない青空が広がっている。
「今日、お祭りだね」
 愁が言った。
「うん」
 美月は頷いた。
「薔薇山の頂上の神社でやるんだよ。屋台がいっぱいあるんだ。綿菓子だってあるんだよ。綿菓子、食べたことある?」
 美月は顔を横に振った。
「ないの?」
 美月は大きく頷いた。
「もの凄く美味しいんだよ。綿みたいに‶ふぁふぁ″してるんだ」
「私、お祭りって初めてなの」
「初めて!」
 愁は驚き叫んだが
「……僕もまだ二回目。去年行っただけ」
 美月は笑った。
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