不器用な恋人【短編】
ひんやりと冷たい床。
シャワーノブをひねるとあっという間に蒸気でバスルーム内が包まれる。
「バカだ…私」
ホント、バカすぎて涙が出ちゃうよ…。
頭からかかるシャワーで、頬から流れてるのが水なのか涙なのか分からない。
けど、それが丁度いい。
どうしてこんな恋をしてるんだろう…。
学生の頃、2つ年上の先輩に片思いしていた。
通学路で先輩の背中を見つけるたび、
廊下ですれ違うたび、
先輩が同級生と楽しそうに話ている笑顔を見るたび、
ドキドキして心がいっぱいになっていた。
偶然目が合えば、その日1日中幸せになっちゃう恋心。
結局、告白なんて出来ないまま先輩は卒業してしまい、
告白できなかった勇気のなさを後悔して心が苦しくなった。