アパート「寿荘」

｢そういやあんた、住む所とか決まってるの?｣


母親が心配そうに尋ねた。


夢の事が気になって仕方ない太一は反応に遅れた。


｢大丈夫!!家賃一万円で敷金、礼金もゼロ！!フリーターだしこのくらいしか賭けれないよ。｣


朝ご飯の卵焼きをほおばりながら太一は答えた。


｢一万円って…。本当に大丈夫なの?｣

不安げな母親をよそに太一は呑気に


｢貧乏生活は承知の上｡ハングリー精神があった方が頑張ろうって気になるし｡｣


｢あんたが決めたんだったらそれでいいけど…｣

しぶしぶ母親は納得したようだった。



父親は終始新聞に目をやり、一言も言葉を発しなった。