女王の密戯
「まあ、親しい人が誰もいないって……」

三浦がそこまで言って言葉を止めた。俯き加減のその顔は何かを思い付いたらしく表情が固まっている。

「……大城も、でしたよね」

三浦は開いていたメニューをぱさりと置き、スーツのポケットから慌てた様子で手帳を取り出した。そしてぱらぱらとそれを捲る。

「昨夜の捜査会議で生野さんの班が報告してましたよね? 大城にも、特別親しいと呼べる者はいないようだ、て」

三浦の話を茶田は今更? と首を傾げた。
そんなことは撮影現場で聴き込みをしているだけでもわかっていることだ。殺された大城には職場にも親しいと呼べる者はいない。そして他の班の報告ではプライベートでもいないらしい。

大城は既に両親も他界していて、身内は誰もいない。
彼の死を哀しむ肉親がいないと知り、茶田はそれに少しだけ安堵したのを思い出した。肉親の死はとてつもない衝撃を与えるものだから。

「それがどうした?」

茶田は対して減っていない胃に何を入れるか考えながら三浦に言った。

「いや、米澤紅華と同じだな、と思って」

今は別に殺された大城と米澤紅華の接点を洗っているわけではない。茶田は溜め息を吐こうとしたが、いや、と直ぐにそれを止めた。



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