瞳の向こうへ
青柳君の喝にみんなの目が生き生きし始めた。

なんか青春って感じ。

とても私らには……。

先攻はどうやら三年生みたい。

女子の黄色い声援がまた。

「うるさいなあ」

ペンをくるくる回す紗弥加ちゃん。

「翔が先発かあ」

ため息をつく青柳君と部長。

「そんなに凄いの?」

「今日はこれを持ってきた」

部長が得意気にベンチ奥から何か持ってきた。

「これは……」

「スピードガンよ」

「ああ!!スカウトが使うあれね」

「そんなとこ」

「速いんですか?」

「速いよ」

翔君の投球練習を見ながら少し沈みがちに答えた。

「とりあえず様子を見よう。どうするかはまた後で考える」

青柳君は自分に言い聞かせるように言っているようだった。

「葵さん、葵さん!」

青柳君としゃべっていてすっかり無防備だった。
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