瞳の向こうへ
『親戚のおばさんのお見舞いです。その後女二人の旅行に行く予定だけど、なんなら若い男女二人の方がお似合いなんだけどなあ』


なんでこんな話になると潤子先生の手話はスピード感あってわかりやすくなるんだよ。


いつものぎこちなさはどこいったんだ。


『僕はこう見えて一途なので、女性二人の旅行楽しんでください』


『そんな感じで彼女に会えればいいんだけど』


『……もういいですか?お互い素敵なゴールデンウィークを』


嘘をついたが、今はそんなこと気にしてられない。


俺の中では彼女はいない……。


あくまで俺の中でのことだけど……。


ここにはもう二度と来ない。


彼女の存在は俺の中ではもう消え失せたと言い聞かせ灼熱地獄へと再び進んでいった。

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