瞳の向こうへ
【葵side】


旅行に行くのにお使いを頼まれるのは生まれて初めてです。


ごはん食べてる間も頭は完全に旅行モードだったのに、用意してる最中に母が目の前にいたのでビックリ!


あまりに突然だったので怒る準備が出来ませんでした。


でも、久しぶりに至近距離で母を見つめてると少しふっくらしてる。


少しホッとした。


『おばさん病院に入院してるの聞いてるでしょ?』


『知ってる』


母の手話をチラ見しながら荷物を詰め込む。


『悪いけど、代わりにお見舞い行ってくれる?』


『え?私が!!』


思わず手を止めてしまった。


『あんたも今度から大学生だし、親の代わりをたまにはしてほしいなあって』


『うーん……』


『お父さんはいつ出張あるかわからないし、お母さん行っても向こうは手話できないもん』


開き直っているように見えるのは気のせい?

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