身勝手な恋情【完結】
「可憐、帰るんだ」
「――」
なんだか可哀想……と思ったけれど、帰らないわけにはいかない。
蓮さんはうなだれた可憐さんをタクシーに乗せる。
―――……
動き出したタクシーのなかはシン、と静かで。
私は助手席で、背後の二人の会話を聞いていた。
「どうして、お母さんは来ないの……?」
「――俺の職場のほうが近いからじゃないの」
「嘘。わかってるよ。お母さんは放任主義ぶってるけど本当は私のこと苦手なんだ」
「――」
「本当は利用されてるの、わかってる……」
利用って……どういうことなんだろう。
だけどそんなことをタクシーの中で聞けるはずもなく、ただ窓の外をぼんやり眺めている風を装うことしか出来ない私。