身勝手な恋情【完結】
食器を片づけて、彼の前に腰を下ろす。
小さな観葉植物の鉢の下に敷いていたガラスの器にコーヒーのかすを入れて彼の前に置く。彼はすらりと長い指で煙草をそこに押し付け火を消した。
「やっぱり、おなかが空いてたんですね?」
「――空いてた。最初から言ってただろ」
「事務所でコーヒーいらないって言ったのは……不味いからって……」
「そう言っただろ?」
少しずつわかってきたかも……。
何言ってんだ、こいつという表情で、眉をひそめる彼を見ていると、少しだけ気分が落ち着いてきた。
「――」
丁寧に煙草を消した彼は、そのまま静かな表情で私に手を伸ばす。
首の後ろに手のひらがまわり、頭が抱き寄せられる。