早く気づけ、バカ。



「…どういうことなん?」



しょーちゃんが怪訝な顔で私の様子を伺う。




「そんなにおかしい?」



くすっと笑ってから話しはじめた。




「智治、彼女いるからさ。もう話さない。いや、話せないかな…。」




少しだけ、視界がゆがんだような気がした。




「絹は、それでええん?」



しょーちゃんは眉を八の字にまげて私を見つめる。




「うん、これでいいんだ。」



これでいい。

最善なんかない、これが二善の方法。



「でも、絹はまだ赤坂のこと好き…なんやろ。」



図星を突かれてついだんまりになってしまう。




「図星やんな…。」




「うん、まだ好き。」




あきらめられるわけが無いだろう。


まだ好き。


きっと誰よりも君を。





「んー。



 なぁ、絹?」



「うーん?」




しょーちゃんに背を向けてきっとしょーちゃんが干したんであろう
ひらひら揺れるタオルを見ながら答えた。




「俺じゃ、あかんかなぁ?」





ぽつり、としょーちゃんが言った。




時が止まる感覚。



たった5秒ほどが


とても長く感じてしまう。





「俺やったら、一番に絹を

 絹だけを愛すで。」



真剣な顔で


こっちを見ているであろうしょーちゃん。



背中に視線が突き刺さる。




「なぁ、絹。」




背中にしょーちゃんのぬくもり。





抱きしめられているんだ…







「俺は絹が、好きやで。」






ぎゅっと胸の辺りに腕の感覚。



その腕に



私も腕を回した。
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