Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「さっそく庭を散歩ですか? ジョーン王妃は、とても元気な方ですね」
聞きたくない声がジョーンの耳に入ってきた。
振り返ると、マードックが笑顔で立っている。その後ろには、ブラック家のジェームズ・ダグラスの姿もあった。
マードックの蛇のような目に、ジョーンは思わず身震いをしたくなった。
目が合ったマードックは一歩、二歩とジョーンに近づいてきた。
「マードック、陛下と書斎に向かったのではありませんか?」
ジョーンは笑顔で話をしようと思っても、頬と口に無駄な力が入っていた。書斎がある城に向かって指を差してみる。
ところが、その手をマードックに握られた。マードックの手の平は湿っていて、気持ちが悪い。
六十代の萎れたマードックの目が、ぎらぎらと輝き出した。精力が漲った若者がセックスアピールをするように、呼吸が荒くなり、勢いよく鼻息を噴射した。
熱い息が手にかかると、ジョーンは我慢できずに身ぶるいをした。
「議員の紹介や政府組織の説明。それから、陛下の今後のスケジュールを話しているだけですから。わざわざ私が説明するほどではありません」
強く握りしめてくるマードックの手を、ジョーンは上下に振って解こうとした。
聞きたくない声がジョーンの耳に入ってきた。
振り返ると、マードックが笑顔で立っている。その後ろには、ブラック家のジェームズ・ダグラスの姿もあった。
マードックの蛇のような目に、ジョーンは思わず身震いをしたくなった。
目が合ったマードックは一歩、二歩とジョーンに近づいてきた。
「マードック、陛下と書斎に向かったのではありませんか?」
ジョーンは笑顔で話をしようと思っても、頬と口に無駄な力が入っていた。書斎がある城に向かって指を差してみる。
ところが、その手をマードックに握られた。マードックの手の平は湿っていて、気持ちが悪い。
六十代の萎れたマードックの目が、ぎらぎらと輝き出した。精力が漲った若者がセックスアピールをするように、呼吸が荒くなり、勢いよく鼻息を噴射した。
熱い息が手にかかると、ジョーンは我慢できずに身ぶるいをした。
「議員の紹介や政府組織の説明。それから、陛下の今後のスケジュールを話しているだけですから。わざわざ私が説明するほどではありません」
強く握りしめてくるマードックの手を、ジョーンは上下に振って解こうとした。