Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「陛下、逃げてください」

 エレノアが叫んだ。

 ジョーンが顔を上げると、積みあがっていた荷物たちがゆらゆらと動いていた。

 ケインもエレノアの声で上を見た。ダグラスの腹を長い足で蹴り飛ばすと、ケインがジョーンを守って覆いかぶさった。ジョーンも咄嗟に頭を抱えて瞳を閉じた。

 大きな音を立てて、荷物が暖炉のほうへと倒れてきた。ジョーンの顔の前には大きな籠が落ちてきた。

 ケインの背中にいくつも落ちてきた物がぶつかっていく。硬い物か重たいものか。ケインの背中に落ちたとき、痛みでケインの表情が崩れた。

 ジョーンは心配でケインを見ていると、笑顔を見せてくれた。

 落ちてくる荷物が落ち着くと、ケインがすぐに起き上がった。

「ダグラスを捕えろ。王妃陛下を殺害しようとしたんだ! 早く!」

 廊下にいた騎兵たちが部屋の中に足を踏み入れると、荷物の下敷きになっているダグラスを探した。物を避けながら、歩くのが大変そうだ。

「王妃陛下、お怪我はありませんか?」

 ケインが心配そうに顔を覗いた。ジョーンから離れて、立ち上がった。

 ジョーンは上半身を起こしてから、両手を観察する。足も動かしてみる。痛いと信号を出す箇所はなかった。

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