Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「ウイリアムは、父親に剣を向けたのよ。ダグラス家の恥だと言ったのを聞いたでしょう」

 ジョーンはローラがとても可哀想に思えた。明るくて活発なローラはどこに隠れてしまったのか。笑顔が愛らしくて、働き者だったローラに戻って欲しい。

「演技かもしれないとは思わないのですか? 父が失敗したときのための策かもしれないのですよ! 私は誰が味方で、誰を信用したらいいのか。わかりません。ゼクス様だって、もしかしたら敵かもしれないと思うと」

 ローラはおろおろと泣き出した。大粒の涙が頬に流れ落ちていく。エレノアが、ローラの背中を優しくさすった。

「ローラ、少し休みなさい。貴方のほうが休息を必要としているみたいだわ」

 ジョーンは暖炉に目を向けた。

 確かにローラの考えも一理あると思う。ウイリアムが演技をしていないとは言い切れない。

(困ったわ。本当に誰を信用したらいいのか)

 ジョーンは立ち上がると、ゼクスとウイリアムが見えるように身体の向きを変えた。
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