Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「申し訳ありません! 僕の陛下への愛情は今も変わりはありません。父の起こした件については、心底から怒りを感じております。僕が疑われるのも、わかります。しかし、ゼクス様は騎士として本当に優秀で、ケイン様と強く信頼し合っているお方です。僕が発言するのもおこがましいですが、ゼクス様は絶対に陛下を裏切ったりはしません」

 ウイリアムが頭を下げた。自ら上げようとはせず、ずっとお辞儀をしたまま動こうとしない。必死な思いで言ったのだと、ジョーンにも伝わった。

 ジョーンはウイリアムの姿をしっかりと見据えた。

「顔を上げなさい。ウイリアムの疑いが晴れるまで、拘束します」

 背筋を伸ばしたウイリアムの目が真っ赤になっていた。泣き出しそうになるのを必死に堪えているようだ。

 ゼクスがウイリアムの傍に歩み寄り、肩を二回叩いた。

 ウイリアムが深々と頭を下げると、廊下にゼクスに連れられて部屋を退出した。

 ジョーンはソファに座った。休みたくても、眠れそうにない。

 心の奥底では、恐怖に怯えているジョーンがいて、頭ではダグラスの次の行動を想像している。脳裏では、ケインがダグラスを殺すシーンもあった。

 ダグラスが死に、ケインとの間に生まれた子が王位に就くまで、ジョーンはゆっくりと眠れない気がした。
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