Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 ジョーンが座ると、議員たちも椅子に腰を下ろした。全員の目が、ジョーンの顔を見ていた。

 ケインがジョーンの横に無言で立っていた。一人の議員が、ケインの全身を舐めるように眺めていた。

 値踏みするように見たあと、口を曲げて邪魔そうな表情をしてから、ジョーンの顔に視線が戻ってきた。

「話合いは、どこまで進んでいるのかしら?」

 ジョーンの言葉に、議員たちが互いの顔を見合わせた。隣にいる議員同士の顔を見て、困った表情をしてジョーンの目も見た。

「何も話してないの? 朝からここで待っていたのでしょう? パースで何が起きたか、聞いているのでしょう?」

「確かに。国王陛下の訃報を聞き付け、集まりましたが……」

 スターリング城の城代アレグザンダー・リヴィングストンが、言いにくそうに口を開いた。

(ろくな話をしていないのね)

 ジェイムズには兄弟はいない。すでに全員が亡くなっている。王位を継承するのは、ジョーンの息子ロスシー公ジェイムズ以外にいない。

 ロスシー公ジェイムズは、まだ六歳。国政を動かすには、摂政職が必要となる。

 摂政職が誰になるか。執務室で賭け事でもしていたのだろう。心にもないお世辞を互いに言い合って、無駄な会話をして時間を過ごしていた。

(馬鹿な連中ばかりで本当に困るわ)
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