Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「ジェームズ・ダグラスの捜索隊は立ち上げたのかしら?」

 またも議員たちが顔を見合わせてから、ジョーンの顔色を伺った。アレグザンダーが不思議そうに首を傾げた。

「兵士は、もう送ってありますが」

「捜索隊はまだ作ってないのね」

 ジョーンの口調が厳しくなった。呆れてしまった。

 ケインが一歩さっと前に出てきた。

「さっそく僕が、捜索隊を」

 ジョーンは右手を挙げて、ケインの言葉を遮った。

「いいの。捜索隊はゼクスに任せるわ。ケインは、ロスシー公ジェイムズの摂政職に任じます」

 議員全員の表情が、氷のように固まった。眉間に皺を寄せている者や、眼球が落ちてしまいそうなくらい見開いている者もいた。

 ケインも驚いている様子だ。何か言いたそうな顔をしながら、ジョーンの顔を見ていた。

 ジョーンはケインに視線を送ってから、議員たちを見渡した。

「次期国王はロスシー公ジェイムズで、摂政はケイン・ダウフィです。意見を聞くつもりはありません。三日後、スクーン修道院で載冠式を行います」

 ジョーンは椅子から立った。議員たちも驚いた顔のまま、席を立つ。ジョーンはドレスの裾を持ち上げると、ドアに向かって歩き始めた。

 ケインもジョーンの後ろを歩いた。

 ジョーンはドアの前で、振りかえった。

「すぐに式の手配をなさい。無駄話をして、時間をつぶさないで」

 ジョーンは議員に命令すると、廊下に出た。執事がドアを閉めると、男たちの声が聞こえてくる。憤慨している声や、驚愕の声が入り混じっていた。

(無駄話をするなって注意したばかりなのに)

 ジョーンは鼻から息を吐き出すと、廊下を歩きだした。
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