Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
 一四三七年二月二十五日。午後八時。

 パースよりも北にあるスクーンの修道院で、ロスシー公ジェイムズの載冠式が行われた。

 スコットランドでは、王の載冠式はスクーンの修道院で行うと決まっていた。

 九世紀半ばにアルバ王国の始祖ケニス・マカルピンがアーガイルから持ってこさせた石をピクト人の本拠地であったスクーンにすえ、王を継ぐ者はこの石に座って即位すると定めた。

 しかし、一二九六年にスクーンの石はエドワードⅠ世によって持ち去られてしまった。それでもスクーンは、マカルピンから流れ出た長い血統を新王に意識させる場であり続けた。

 六歳のロスシー公ジェイムズはジェイムズⅡ世として即位した。

 とても六歳の男児とは思えない態度で、堂々と式に臨んだ。久しぶりに見たわが子の姿に、ジョーンは感動した。

 ケインとよく似た青い瞳が、とても綺麗だった。身体全体から漂う賢さに、ケインの子で本当に良かったと、心の底から感じた。

 ジェイムズⅡ世が誕生すると同時に、ケインも摂政職の任に就いた。ジェイムズⅡ世とケインが並んで歩く姿を見られて、ジョーンは幸福に浸れた。

 式が無事に終わった安心感からか、ジョーンは一気に疲れが出てしまい、一足先に部屋に戻って横になった。
< 209 / 266 >

この作品をシェア

pagetop