Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「あとはわかるだろ?」とゼクスが眉を上げた。ウイリアムが納得したように頭を上下に振った。

「どうにかならないのですか? ケイン様は摂政でしょう? 一番偉いお方です。ウイリアム様の処刑を取り止めにしてください。私、そのためなら何でもしますから」

 ベアトリクスがケインの胸を触ると、目を真っ赤にして訴えてきた。

「ベアトリクス、何でもすると軽々しく口にしてはならない」

 ウイリアムが格子の中から、声を荒げた。

(ウイリアムの言う通りだ。滅多に「何でもする」と言ってはいけないよ)

 ケインは胸を掴んでいるベアトリクスの手を外すと、ウイリアムの顔を見た。ウイリアムが、心配そうな目でベアトリクスを見ていた。
        
 ベアトリクスの後ろに立っているゼクスと目が合うと、ゼクスの口元が緩んだ。ゼクスの思い通りに、話が進んで嬉しそうだ。

「処刑を逃れる方法がない……とは限らない」

 ゼクスの声に、ベアトリクスが振り返る。ケインから離れると、ゼクスの腕をベアトリクスが掴んだ。
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