Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「私も、ウイリアムの態度が引っかかっていた。裏切る可能性が高いかもしれない」

 ケインはエールを机の上に置いた。

「父親を憎まず、我々を憎んだってわけか。塔に入れたのは俺らだしな」

「父親すらも裏切る可能性もある」

 ケインの言葉に、ゼクスが口笛を吹いた。

「新たな反乱軍の旗揚げか?」

「ウイリアムに、そんな人脈はないさ。器量もない。やるなら、せいぜいダグラス伯を奪うくらいだ。国王軍を裏切って、父を殺し、新たな指導者になろうとするくらいだ」

「失敗しそうになったら、父親に責任をなすりつけて、我々の影に隠れるわけか」

 面白いと言わんばかりにゼクスが肩を揺らして笑った。

 手に持っているエールを飲み干すと、テーブルに勢いよく置いた。グラスがテーブルに当たる音が、大きく鳴った。

「あくまでも可能性の話だが。国王軍の指示に従ったほうが、幸せになれる。父親を失うだけで、塔での生活も終わり、貴族になれるんだ」

「ウイリアム以外にも、使えそうな貴族を見つけておくか」

 ゼクスが欠伸をしながら、背伸びもした。目が充血して、涙目になっていた。お腹も膨れて、酒を飲み、眠気に襲われてきたのだろう。
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