Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「噂によれば、ジェイムズⅠ世とは似ても似つかない風貌だとか? それのどこが王家の人間と呼べるのでしょう?」

「似ていないから良いです。素晴らしい国王陛下になられると期待が持てませんか?」

 ケインは表情を変えずに切り返した。こんなところで動揺など絶対に見せられない。

「ケイン殿のお生まれはどちらです?」

「イングランドのロンドンです」

 マイケルが嬉しそうに頬を持ち上げた。

「太后陛下もイングランドの出身で、摂政職の貴殿もイングランド人だ。どうして国王陛下がイングランドに毒されていないと、自信を持って言えるのです? ゼクス殿の妻もイングランド出身ですよね?」

 マイケルの目がゼクスに向いた。ゼクスが不機嫌そうな声で、返事をしていた。ケインはトマスに目をやる。無表情で、じっとケインの顔を見つめていた。

 ケインの顔を見て、微妙な感情の動きを読み取ろうとしているのか。それともただ交渉が下手だから、黙って前を見ているだけなのか。

 トマスが優秀な人間なのか。それとも愚鈍な人間なのか。黙って見られているだけではケインには皆目わからなかった。

 顔は賢そうだ。しかし中身が伴っているかどうかは、話してみて行動を見てからじゃないと、軽々に判断はできない。

 マイケルが王族に敵視をしていて、交渉をするまでもないと感じているのは、話してわかった。
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