Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
ジョーンは手を前に伸ばすと、ケインの頬に触れた。
「イングランド人がスコットランドで生きていくのに、それなりの努力と覚悟が必要だとわかっていましたが。人の上に立つのは難しい」
頬を触っていたジョーンの手をケインの暖かい手が、包み込んできた。手を握り合い、互いを見つめ合った。
ケインに何があったのだろう。こんな弱気なケインの言葉を聞くのは初めてだ。どんな場面でも感情を表に出したりしない人なのに。
マー伯トマスとの交渉で、心が揺らぐような話をしたのだろう。だからジョーンの質問にも、笑顔で誤魔化すのだ。
ケインは今、つらい思いをしている。ジョーンはケインの傷付いている気持ちを癒してあげたいと思った。
「今の話は忘れてください。寝ぼけていました」
ケインが笑顔を見せた。明らかに、作り笑顔だ。無理している。ジョーンは握りしめている手に力を入れた。
「『無理に笑う必要はありません』ってよくケインが言っていたわね。ケインも、無理に笑う必要なんかないのよ」
ケインが起きあがった。乱れている金髪を、右手で掻き揚げた。見えたのは悲しげに微笑むケインの表情だった。握り合っている二人の手がゆっくりと解けた。
人の悪口一つ零さないなんて、ケインは胸が窮屈にならないのだろうか。
それとも、他に吐き出し口があるのだろうか。他に話をする女がいるのではないか。そう不安になった日々もあった。
「イングランド人がスコットランドで生きていくのに、それなりの努力と覚悟が必要だとわかっていましたが。人の上に立つのは難しい」
頬を触っていたジョーンの手をケインの暖かい手が、包み込んできた。手を握り合い、互いを見つめ合った。
ケインに何があったのだろう。こんな弱気なケインの言葉を聞くのは初めてだ。どんな場面でも感情を表に出したりしない人なのに。
マー伯トマスとの交渉で、心が揺らぐような話をしたのだろう。だからジョーンの質問にも、笑顔で誤魔化すのだ。
ケインは今、つらい思いをしている。ジョーンはケインの傷付いている気持ちを癒してあげたいと思った。
「今の話は忘れてください。寝ぼけていました」
ケインが笑顔を見せた。明らかに、作り笑顔だ。無理している。ジョーンは握りしめている手に力を入れた。
「『無理に笑う必要はありません』ってよくケインが言っていたわね。ケインも、無理に笑う必要なんかないのよ」
ケインが起きあがった。乱れている金髪を、右手で掻き揚げた。見えたのは悲しげに微笑むケインの表情だった。握り合っている二人の手がゆっくりと解けた。
人の悪口一つ零さないなんて、ケインは胸が窮屈にならないのだろうか。
それとも、他に吐き出し口があるのだろうか。他に話をする女がいるのではないか。そう不安になった日々もあった。