Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「先日、ロイとブラック家のジェームズ・ダグラスの使者がパブから出てくるのを見ました。雰囲気から判断して、我らを裏切る可能性が高いかと思いましたので、ご報告をと、思いまして」


 ゼクスが、エドマンドに報告の礼を述べた。

 ケインは椅子に背を預けると、天井を見上げた。

(ジェームズ・ダグラスがロイに接触をしただと?)

 レティアとの昔話を持ち出したのだろうか。事実を捻じ曲げて、国王軍を裏切るような情報を流し、味方につけたかもしれない。

 ブラック家のジェームズ・ダグラスは交渉術に長けている。ケインやジョーンを恨むように仕向けたのだろう。レティアの本性も知らず、ロイはブラック家の操り人形となる。

「ブラック家がロイを利用するなら、こちらもロイを使おうか?」

 ケインは視線を天井から、椅子に座っている男たちに戻した。

(ロイに、間違った情報を流してもらおう)

 良い策ができたと嬉しかった。次はどんな策を練ろうかと頭を捻っていたところだった。ケインの心は、ぱあっと明るくなった。

 エドマンドは良い場面を目撃してくれた。ケインはエドマンドの運の良さに感謝した。

 ゼクスを見ると、ケインの意見に賛成しているらしい。楽しそうな顔をして伸びた髭を触っていた。
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