Mezza Voce Storia d'Aore-愛の物語を囁いて-
「今度、ブラック家のジェームズ・ダグラスに会っていただけませんか?」

 ケインが足を止めて、ゆっくりと身体を反転させた。冷たい風が、ケインの前髪を揺らしていた。

(急に何を言い出すの?)

 ジョーンの顔を見たケインの目を、真っ直ぐに見つめ返した。

 急にジェイムズに知られると言い、今度はダグラスに会って欲しいと頼んでくるなんておかしい。ケインらしくない。

 もしかしてダグラスに、何か言われたのだろうか。ダグラスがジョーンとケインの関係を知っていると、脅してきたのか。

「ダグラスの子、ウイリアム様を、王妃の小姓として受け入れて欲しいとお話をされていたので」

 ジョーンは、ケインの青い瞳に影があるように感じた。

「ケインはダグラスに脅されたの?」

「なぜ、陛下はそうお思いになるのですか?」

 すぐに返答するケインの顔が笑っていた。

 真実を話すつもりは、ケインにはないのだとショーンは理解した。ケインが話さないのなら、ジョーンが聞く必要のない話だ。

 ジョーンを一番に考えるケインの判断を優先しよう。ケインが自身で処理できる範囲だと思ったから、詳しい事情をジョーンに話さないのだ。

「いいわ。会いましょう。日時は、追って知らせます。その際にウイリアムを連れてくるといいわ。小姓にします」

 ジョーンの言葉に、ケインの肩の力が抜けたように見えた。

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