仮面の裏側

薄く開いた扉から入って来たのは、背の高いモデルのような女の人でした。


「理事長、約束通りに来たけど…。」

「ありがとう。
僕の娘の彩優花、くれぐれもよろしくね。」


理事長さんは入って来た女の人に簡単に紹介をする。

女の人はロングの茶髪の髪を掻き揚げて、顔を覗き込んできた。

何だか、雰囲気や容姿などから、この女の人は所謂、姉御肌という感じの人らしいです。


「この子、可愛い顔してるじゃん。
理事長が心配するのも分かるね。
けど、この、彩優花って子、理事長のいけ好かない顔に似てないよね。」

「彩優花は養子だよ。
僕の娘になってから、まだ日は浅いんだ。
訳ありってやつ。」

「まあ、あたしにはそんなことは関係ないんだけど。」


理事長さんと女の人の会話はテンポが速くてついていけません。

ちょうど、目に入った熱帯魚の水槽をなんとなく見つめます。


「じゃ、部屋まで連れていけばいいんだね。」


女の人に腕を掴まれて理事長室から出ます。

ドアが閉まるときに「バイバイ」と手を振る理事長さんの姿が見えました。

ボーッとしている間に随分、話は進んでいたみたいです。

この人に何処に連れて行かれるのでしょうか。

手を引いて前を歩く人を見つめて考えます。
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