空色の瞳にキスを。
ルグィンは止めようと足を踏み出そうとした。

瞬間、ナナセがこちらを見て、声には出さずに唇だけ動かした。

(来ちゃダメ)

そう言って首を振ると、サシガネに向かって右手を差し出した。

一瞬瞳を閉じて、また開く。
伏せた時より、今。
今より、数瞬後と瞳がぐんと冴え渡る。

サシガネが剣を引いて、振りかぶったその時。


「ローレライ。」

ナナセの薄い唇が、ゆっくり動いた。


床と平行に差し出された手の前に彼女の呟きに似た呪文を切っ掛けに魔力の塊が出現した。

星のように煌めく青銀のそれは、一瞬のうちにサシガネを飲み込んでいく。

大きく広がった銀の触手は、触手と言うよりも、海の流れのようで。

渦の中にサシガネが巻き込まれていくように見える。

そこだけが海中のようで。

相手を傷付ける魔術なのに、ルグィンは綺麗だと思った。

彼女の底無しの魔力にも驚きつつ、巻き込まれないようにルグィンは数歩後ろに下がる。

ぱくんとサシガネを飲み込んで、身動きをとれなくする。

柔らかい光が金髪の狩人の身動きを取れなくする。

方法は違っても、トキワとサシガネ二人とも痛め付けないのは同じ。

ごとん、とサシガネの膝が床についた。

サシガネをトキワの隣に同じように転がして、彼女はゆっくりと二人の方へ歩み寄る。

青く光るサシガネの体を拘束する魔術のお陰で、近づいてくるナナセの顔がよく分かった。

「ねぇ、あたし、サシガネさんの明るさとトキワさんの優しさ…大好きだったよ。」

切ない笑顔で一言溢して、別れを告げる。

「おやすみ…。」

そう一言呟いて、眠りの魔術を二人にかける。

二人の上に手を翳して呪文を呟く。

ナナセは瞳を閉じて唇を動かす。

足元に一粒、滴が落ちた。

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