空色の瞳にキスを。
自分を狙って来た狩人二人に眠りの魔術を掛け終えると、ナナセは隣の部屋へと駆け出した。

そして、スズランに治癒の魔術を掛ける。

月明かりのない夜の闇に、魔術を使い輝く空色の瞳がいやに映える。


スズランのざっくりと斬られた傷の上に手を翳して、彼女は必死に呪文を唱える。


二人に裏切られたかも知れないけど、薬を盛られたということはそういうことかも知れないけど。

たった一ヶ月の関わりで、ナナセにとってこの二人は堪らなく大切な存在へと変わっていた。


隣でスズランを心配そうに見詰める黒猫の少年も、青い顔で血まみれで横たわっている獅子の少女も、欠けて欲しくないと銀の少女は願う。


―いなくなって欲しくない―…。


そんな切ない想いが、空色の瞳から涙となって溢れ出て。


「う…。」

斬られたショックと出血で気を失っていた彼女が微かに呻いた時、堪らなく嬉しくて、また泣いた。


全ての傷を塞ぎ終えて、スズランの意識も大分戻ってきた頃にはナナセの涙も落ち着いていた。


「ナナセ…?」

これまで何も言わずに治癒の魔術を受けていたスズランが、初めて口を開いた。

「何…?」

「助けくれてありがとう…。」

金に近い茶の瞳が床からナナセを真っ直ぐに見つめている。

スズランのその台詞に、ナナセの瞳が獅子の少女の上でゆらゆらと揺れる。

淡い青が、ルグィンが持って来てくれたそばにあるランプの光を受けて輝く。


唇を噛みしめた銀の少女は、安堵の呟きを溢した。

「助けられて、良かった…。」

堪えきれなくて遂に零れた滴は、スズランの頬に落ちる。

泣いて自分の命を喜んでくれる彼女に、獅子の少女は詫びる。

「信頼を、裏切っちゃってごめんね…。」

その言葉に、ナナセの瞳が大きく開かれる。

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