空色の瞳にキスを。
「貴女たちは出発しなさい。
今日の朝と、決めたでしょう?」

そんな彼女に、スズランが凛と響く声で言った。

「スズラン…!」

ぱっと顔をあげれば有無を言わせぬ獅子の少女のその瞳。

その顔に、なにも言えなくて困っていると、スズランが柔らかく笑んだ。

「私は大丈夫。
ねぇナナセ。
私がどこの家の娘か知ってる?」


その瞬間、幼い記憶の中に彼女の名字があったことを思い出す。


確か、そんなに裕福ではなかったはずだけど、確かに貴族の名。

タチカワ家は、カイの政治を支援していた家。

「タチカワはね、カイ前国王支持派だったのよ?
家の中で一番武術に秀でた私は見せしめにこうなったんだけど…。」

そうやって彼女の左手が触れるのは、今はもうナナセにとっては当たり前となった金色の綺麗なライオンの耳。


「一応、私お嬢様なの。」

にい、とスズランの唇が笑みを形作る。

「助けてくれる人も、後ろ楯もあるわ。」

そう言うスズランに、ナナセが反論する。

「でも、見せしめってことは…。」

「そう。今は中流貴族から下流貴族になってるわ。
でも私も闇に精通してるし、お父様も強い方だから、国だって無視できないの。
そんなもので潰されるタチカワじゃないもの。」

ナナセが見知った彼女の強気な笑顔を、夜明けの淡い光が優しく包む。

そんなスズランの姿にひとまずナナセは落ち着くことにした。


「ここには仲間は…?」

彼女はまた尋ねる。


「ルグィンと貴女以外には、本当の仲間は二人ね。
私の妹が、二人。」

スズランはそう言うと、ブーツの爪先でリズムを付けて5回床を蹴った。


すると獅子の少女にそっくりな双子が壁をすり抜けて現れた。

魔術を使う人間ならこんな能力はあってもおかしくないのに、現れ方に大分ナナセは驚いた。

ストン、と堅い床にブーツの軽い音を鳴らして獅子の少女の3つ程下に見える少女たちがナナセとスズランの間に降り立つ。


双子は瞳の色が違うだけで、あとは何も変わらないようだった。



銀の瞳の少女が口を開く。

「何よ、お姉さま。
早朝から呼び出さないでくれないかしら。」


金の瞳の片割れが続ける。

「…銀髪?ナナセ様ですか?
初にお目にかかります。
私、ロロとこちらが妹ララです。」

にこ、と笑い、頭を下げるその姿ががスズランにそっくりで、姉妹なんだなぁと実感させられる。


「ナナセ王女様。
お姉さまは責任もって預からせていただきますよ。」


くすりとふざけて笑った銀の瞳のララは、スズランに頭を叩かれた。

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