空色の瞳にキスを。
黒の少女と黒猫が、リョウオウへ冬の空を駆ける。

2人の瞳は朝の光にきらきらと輝いていて、空を飛ぶことが好きだと物語っている。

2人で空を舞うことに慣れてきた頃、ふとルグィンの声が空中にこぼれた。

「ナナセ…。」

今は偽りの姿で黒髪を風になびかせている隣の少女の名を呼べば、彼女はこちらを向いて答える。


「なに?」


「お前はそこまでして、国から必死に逃げてまで、何がしたいんだ?」


ルグィンは真剣な眼差しで、少女の黒い瞳の奥を見つめる。



―簡単に問われてしまった、彼女の一番底にある深い思い。


偽りの姿のまま空を飛びながら、彼女はなにも答えずに、左にいるルグィンを見つめる。

黒の瞳のその奥に、微かな空が見え隠れする。

だが瞳は揺れることなく真っ直ぐに黒猫を映す。



数秒の沈黙の後、ファイという名の架空の少女の姿をしたままのナナセは口を開いた。



「あたしは…いつかライに会いに行きたいの。

今行ってもきっとあたしが弱くて話をしようとしてもダメだろうから。


心が強くなった時に、いつになるか分からないけど…、とうさんを殺した理由をもう一度聞きたい。

フェルノールになんでとうさんは殺されたのか、知りたいの。

だって、この国はおかしいことだらけだもの。」


ナナセは口を閉じて、一旦息を吸い込んで、また話し出す。


昔から彼女の心の奥底にずっと持っていた想いなのだろう、迷いなく彼女の想いは紡がれる。


「暗殺の理由だけは、どうしても聞いておきたいの。」


一瞬だけ、悲しそうに自嘲気味に笑って黒髪の少女は言った。



ルグィンはナナセが迷いながらも返答を拒否せずに答える様子に、小さな覚悟を持って尋ねる。

もう一段階踏み込んで聞いてみる。


「何を聞きたいんだ?」

その問いが来るのを予想していたように、間髪入れずに答えが返ってくる。


「あたし、ルイスに来たときに昔の話をしたでしょう?」

風が二人の耳元でゴウと鳴る。

ナナセの瞳は、黒い偽りの瞳でも、真っ直ぐにルグィンを射抜くように見る。


「あぁ。」


「あの話を思い出しながら、聞いてね。」

ルグィンが頷いたのを見て、ナナセはそう前置きして話し出した。

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