空色の瞳にキスを。
「普通、国王を暗殺した国は支配されるはずなのに、なんでルイの国を支配しないでいるの?


政権が握られて軍事に特化しているだけ。

もちろん戦争に駆り出されたり酷い扱いを受けているけど、なんで残虐国と名高いフェルノールにこんなに甘い扱いを受けてるの?


もっと酷い仕打ちにあって滅んだ国をたくさん知ってるわ。

どうして国民はは生きていられるのかも分からないの。」


「うん。それで?」

先を促されて少女は続ける。

「まだこの国は王族内の覇権争いでとうさんは…カイは死んだことになってるでしょう?

カイを殺してなんで国をおかしいことだらけにしたのかを、ライに聞きたいの。」


空の彼方を見据えていう彼女は、いつもよりも強い意思のこもった声で言う。

「聞いて、どうするんだ?」

ルグィンはまた尋ねる。


こうしている間にも、どんどんと足元の景色は流れていく。

自分達だけが鮮明で、世界に取り残された気分になる。



「場合によっては、あたしと一緒に探させていたルイの石を渡してもいいわ。」


そんな少女の思ってもみなかった答えにルグィンは絶句した。



自分を狙っていた者に、褒美を与えるなんて、理解できなかった。
その顔を見て、ナナセは困ったように笑う。


「この石はどうやらルイの王族しか使えないみたいなの。

だから王族じゃないライは石は使うことができないはずだから大丈夫。


だけど、国王の飾りとして、威厳を示すには使えるし。

それにあたしと一緒に探させていたのは、この石を持ったあたしが反乱を起こしたりしないように、っていう理由だろうし。


…どうせ、あたしは王にはなれないだろうから。

偽りの王でも国を統べる人にルイの石を渡しておきたいわ。」


「なぜ、王にならないんだ?」

資格はあるのにと、ルグィンは小さく続けた。

怪訝そうなルグィンの顔を見て、ナナセはまた口を開く。


「一度でも汚名を着せられた王女様に、付いてきてくれる人はいないでしょう?」


泣きそうな、悲しそうな一番苦しい笑顔が黒猫の少年の目の前にあった。

その笑顔が心にくっきりと焼き付いた。



―誰もに信頼されないと知っていて王になるのは辛いだろう。

野望もなくただ民のために働く真っ直ぐな王が、民に一生信頼されないのは、ひどく惨いことに思えた。


「だから、王にはなれないけど…。

もうあたしを知る人には会えないけど…、育ったお城には戻れないけど…。

それだけでいいから、聞きたいんだ。」



笑って言った彼女の目尻から、透明な滴が、ぽろりと落ちた。


今は亡き父への、ただ大好きな人への、ただ純粋な想い。
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