空色の瞳にキスを。
日はもう地平線に沈みかけている、そんな冬の寒い夕暮れ。

ファイの動揺をルグィンが背中で感じなくなった頃。



ナコがまた話を切り換えた。


「で、ここには何を?」


核心に近いこの言葉に、あまり喋らなかったルグィンがここでやっと口を開く。


「会いたい奴がいてな。

王女の知り合いで改造されているらしい。」


ナコを見遣る黒髪の視線はいつも通りの冷ややかさを持っている。

それはいつものことなのか、ナコは怯むことなくぱっと明るい顔をして言葉を返す。


「お、知ってたのか!

凄い改造の精度らしいな。

ちょうど俺も気になっていたところなんだよな~。

見に行くか?」


赤髪の男が振り向いて尋ねれば、こくりと黒猫が頷いた。


「あぁ。

だけど俺はこの地域の担当の軍人ではないからここにいたという記録を残したくない。」


そうルグィンが言えばナコは面白そうに続きを催促する。


「そうか。

じゃあ…夜中に?」


彼の催促を知っていて、彼が答えた内容がごく当たり前のことのように答える。


「あぁ。

忍び込むさ。」

そして二人で顔を見合わせてにやりと笑った。



時間は着々と進み、日が暮れて真夜中の静けさが包む、小さな宿。

ナコが気を利かせてくれたのかはよく分からない部屋割りをしてくれていた。

2つ取った部屋の部屋割りで一部屋にナコ、隣の部屋にルグィンとファイ。


ルグィンにとっては耐え難い部屋割りではあるのだが、ナコは変な勘違いをしているらしく、止められなかった。


「黙っててごめんな。」


部屋に落ち着くなり、黒髪の少女は黒猫にそう言われた。

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