空色の瞳にキスを。
「ううん…。


だけど、本当は敵の立場にいるなんて…。

軍だから敵なのは知っていたけど、だけど…本当に敵だなんて、知らなかった…。」

彼女はまた俯いて、言葉を溢した。

すると低い声が返って来る。

「でも、お前に会ってからは出来なくなった。

きっと賞金首は正しいやつが多いはずだから。」


黒い瞳にまた青が混じる。

「…そうじゃないの!」

ぐらぐらと心は揺さぶられて、ナナセの心が簡単に溢れ出す。



─いつからこんなに弱くなった?

人の立場が分かっただけで、ぐらぐらと揺れる心は、アズキとトーヤとがくれたもの。


泣きそうともとれる顔で、必死にファイは言う。

「あたしの敵のあなたの立場が…。

私に協力していればあなたの立場が悪くなるでしょう…!?」


予想していなかった彼女の答えに、黒猫は目をしばたたかせる。

すがり付くように黒猫の服の裾を掴んでこちらを見上げてくる少女はまた言葉を紡ぐ。

「そんなの…嫌だよ。

あたしのせいでルグィンが追われるなんて…嫌だよ。

自分の身を捨ててまであたしを助けないで…!」


身を切られるように痛々しいその声が、彼の耳に響いても彼は優しく笑う。


「俺は、お前に協力したくてやっているんだ。」

ゆっくりと彼の手が優しく少女の腰に回る。


「でも…!」


なお言い返そうとする彼女に、金の瞳がとびきり切ない色を映す。

「俺が大事なのは、お前だ。

俺はお前を助けられるならいいんだ。」


優しくて切ない言葉の真意は、彼女に届きはしない。


「あたしもルグィンが大事なの。

だから、追われる身になんかさせない。」

少しだけずれた少女の決意は、的を射ていなくても少年の心に暖かさを残して。



「…そう。

ありがと。」


感謝の言葉にファイが顔を上げれば、ルグィンの優しい笑みが見えて目を丸くする。

優しいけど無愛想な彼の笑顔は、珍しくて。


彼女の胸にも、小さな灯りが柔らかく広がった。
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