空色の瞳にキスを。
ナコとは違う低い張り詰めた声が廊下に静かに響いた。


この先にアズキがいる。

この足が進む先にトーヤがいる。

そう思うと、ファイの歩みが速くなる。

それをルグィンが無言で制し、足音を立てないように静かに二人で歩く。

「巡回がいたはずだ。
気を付けろ。

見つかると厄介だぞ。」


静かなここにはそんな声すらよく響く。

「うん。」



夜目が利くルグィンと自分の目を魔術で見えるようにしたファイはゆっくりと、だが確実にナコに教えて貰った道順を辿る。

ゆっくりと進む廊下の突き当たりに、一際頑丈な扉の部屋が見えた。


それは、ナコの教えてくれた道の終着点。


他の部屋は1つなのに、その部屋には鍵が2つ付いている。

壁は微かな闇の光に鈍く光って。

「ここが…。」

少女は生唾を飲み込む。

「そうだ。

ここがお前の友達にあてがわれた部屋。」


ファイはもう一歩歩み寄り、ゆっくりと冷たい金属の扉を撫でる。

ファイの手が2本の鎖に触れて、カチャン、と音がして二人で身をすくめる。


「まわりは誰もいないよね。」

きょろきょろと辺りを見回し、確認をとる。


耳をそばだてた黒猫が誰もいないと最終確認を取り、ファイに頷く。



その答えを聞くとファイの黒い瞳に色が落ちたように青が混じり、どんどんと本来のナナセの色に戻っていく。


滲み始めた淡い青は、柔らかい光を灯す。


空色の瞳で扉を撫でて、そして右手が鍵に触れる。

静かなこの闇では、流れるように呪文を口ずさむ少女の小さな声すら反響させる。



ファイははやる気持ちを押さえつけ、最後に溢した。



「開いて…。」


最後の言葉が紡がれたとほぼ同時に鍵が小さな音をたてて崩れた。


ナナセの魔術で、扉の鍵穴は二人の目の前でポロポロと金属が脆く崩れ落ちる。

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