空色の瞳にキスを。
─今日は、眠れない。

─だって今夜は私の、トーヤの運命の分岐点。


─そう視たもの。


自分が眠っていたソファーを下りて、先見の少女はベッドで眠る人へと近づく。


ベッドで丸くなる茶髪の年下の少年は、もう幼い顔立ちを欠片も残していない。

男臭さはないものの、それでも自分よりぐんと大人びた寝顔をしている。

改造により魔力が格段に大きくなったために耐えきれなくなった少年の体が、大人になることによって耐えたのだ。


それだけでももう改造によって増える魔力の大きさが分かるんじゃないかとアズキは思う。


─私の友達だったから、巻き込まれたトーヤ。

彼には詫びる言葉もなくて。


トーヤが起きていれば気丈に振る舞えても、一人で起きているこの時間には辛かった。

いつ彼の顔を見ても頭をよぎるその自責の念が、前髪から除く右目に映り悲しく揺らめく。



「トーヤ、起きて。」


肩を揺り起こすとトーヤは数秒で目を覚まし、ゆっくりと起きた。


ベッドもひとつしかないこの部屋で、交代で硬いソファーとベッドで眠るこの生活にも慣れた。

夜に実験があったり、隣の人が連れ出されたりする生活のせいで眠りは浅く目覚めは早くなった。


慣れたとはいえ、何の前触れもなく訪れたこの囚われた生活は苦しかった。


「…頭痛ぇ…。」

トーヤの第一声はこんな呟きだった。

殺魔効果のある石を壁に使っているこの部屋は、身に堪える。

魔力の扉が開いた自分達の生命の源であり、力の根元である魔力を吸いとるのだ。


魔術師として才能を開化させた時から、体の作りが変わったのだ。

魔力はなくてはならないものに。
使いたくなくても自然に使ってしまうものに。


それだけ身体と密接に繋がっている魔力を奪われるのは辛くないと言えば嘘になる。



─それでも、今日は動かなくてはならない。


何があっても、このまま囚われる運命だけは避けたいから。



自分のために、トーヤのために。

そして、親友のために。


私はこの先の未来のことを知っている。

なかなか殺魔の力のあるこの壁のお陰で夢が未来を見せてはくれないから今から何が起こるかは分からないけど。

けれど、ここが運命の分岐点なんだ。

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