空色の瞳にキスを。
理屈ではなく、アズキの直感的な判断だった。


それは目の前の少女が喋るほど疑いようのないものへと変わっていく。

─本当に、来てくれた。


「…ナナ…。」

ぱあ、とアズキの顔が輝く。

「…内緒よ、今は言わないで。

助けに来たよ。」


名を呼ばれるまでに言葉を被せたファイが強気な笑みを見せて、一歩踏み出す。

部屋の中へとファイが踏み込む。



それを見て、アズキとトーヤが必死に小声で止める。



「ダメ…!」
「待て…!」


アズキとトーヤの必死の制止よりも彼女の行動の方が早かった。



足を踏み入れた瞬間、ぐらりとファイの視界が歪む。

「…戻って…!」

アズキの慌てた顔もグニャリと歪む。


「ここにいちゃダメ…!」

アズキの必死の呼び掛けは虚しく夜の廊下へ響き渡る。


親友の声は聞こえたのに返事ができない黒髪の少女。

口を開いても声が出ない。


異変を感じたルグィンはゆっくりと部屋へと足を踏み入れたが何も感じない。

このまま自分も動けなくなることを恐れながらも少女へと早足で近づく。


その間にも少女はぐらぐらと視界が揺れて、立つこともままならなくなる。



黒い偽の髪は、塗り替えられるように元の色を取り戻していく。

苦しそうに歪んだ黒い瞳には、青が滲んでいく。


これは魔力の急激な減少によるものだと曖昧になり始めた意識の中でナナセは思った。


─殺魔の力だ…。




三人が駆け寄る目の前で少女はコマ送りの映像のように崩れ落ちていく。


「…つ…。」

息は荒く、命を奪われる感覚に最後の踏ん張りをする少女の足が耐えられなくなる。

最後には外へ出ることも出来ずに、動けなくなり銀髪の少女は黒猫の腕に受け止められる。

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