空色の瞳にキスを。
ルグィンがナナセを抱いてアズキに視線を送る。

「まさかこの部屋…。」


部屋の外からばらばらと足音が聞こえてくる。

慌てた数人の男の声も混じっている。


外のその騒がしさに、部屋の中の空気まで張り詰める。



「殺魔石が混じった壁で覆われてる…!

それより早く出ろ…!」

トーヤは身ぶりを交えるほど焦ってナナセを抱いた黒猫に怒鳴る。

くるりと向きを変えて黒猫の少年はひとつしかない部屋の入り口へと駆け出した。


魔力が強い人にほど、効果を見せる殺魔の石。

国一の魔力の持ち主であるナナセには効果は絶大だった。


少女の苦しそうな息が黒髪の少年の不安を掻き立てる。

ナナセを抱きかかえたルグィンがまず部屋を出ると、強張っていた少女の身体から力が抜けた。


ばらばらと足音が近付いてくる。

奥まった部屋であるために逃げ場がなくて入り口で黒猫は立ち止まる。

―しまった、逃げ場がない。


ルグィンは唇を引き結ぶ。



ルグィンの背中には、殺魔の力のかかってしまう部屋の入り口で立ち止まっているアズキとトーヤが。

自分の腕の中には愛しい賞金首。


見つかってはならない彼ら。

捕まってはならない彼ら。



光を持ってこちらを照らそうとしている巡回の警備員には、銀の少女の正体は分かってしまう。


彼らが一番捕まえたがっている罪人なのだから。



まだ荒い息をしている少女に自分の革の帽子を被せると、間髪入れずに黒猫は警備員の操るランプや魔術の光で照らされる。

この光の中では、自分の正体は分かってしまうと知っていたが、それはどうでもよかった。


「いたぞ!」

「こっちだ!」


そして警備員達は照らした先を見て驚く。


「…黒猫…の。」


「シュン…ルグィン…。」


怪物と恐れられた改造人間の中でも冷酷と噂される彼が、ここに。

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