空色の瞳にキスを。
光の中の黒猫と少女を十数の目が舐めるように見る。

「あいつが抱えているのは?」

「分かりません!」

目の前で交わされる受け答えにも動じず、ルグィンは真っ直ぐにもと来た窓のある廊下の先を見つめる。


「後ろにいるのは誰だ!」

一番後ろから響いてきた威厳のある声に部下らしき警備員が二人を照らし出す。

「きゃ!」
「…っ。」

遂にアズキとトーヤも照らされた。

「…赤い目…!

実験体ソライと実験体キリタニです!」


「実験体は殺しても構わんのか?」

誰かの冷静な声が寒い廊下に嫌に響く。


「こいつらはナナセの餌だ。

殺しては駄目だとクレイジー陛下から聞いているだろう?」



照らされた光の中、殺魔の力が及ばない境界線を先に越えたトーヤはまだ内側にいるアズキに手を差し出す。

「アズキ…。」

少女はその少年の手の指先を震える手でぎゅっと握りしめて、固く目を瞑る。

「…でも…怖い…。」


殺魔の力が効かなくなるのを恐れるようにアズキはそこから出ようとしない。

「さぁ、狙え!

侵入者を殺せ!

実験体は生け捕りだ!」

指揮を執る男が自分の後ろに従えた数人の部下に向かって叫ぶ。


「アズキ。」

呼ばれた彼女は決意したように目を開いて前を見て、殺魔の力の影響しない廊下へと踏み出した。


「…っ!」


体が殺魔の力から解放された少女は、突然に少女は目を見開く。



「い…いやぁぁー!」


その場にいたすべての人間が驚きで動きを止めた。

前髪の隙間から覗く見開かれた血を溢したような赤を放つ左の瞳。

「やめて、やめて…っ…。

私に血を、見せないで―…!」

先見の彼女の叫びが闇夜の廊下にこだまする。



それはもちろん、一階でルグィンとファイを待つナコにも伝わる。

「…、叫び声…?」

巡回の奴等が何とかしてくれるだろうと見当をつけながらも、ナコは座っていたソファーから立ち上がった。



向かうは、声のした上の階。

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