空色の瞳にキスを。
目にも止まらぬ速さで目の前の敵を倒していく異形の黒猫。

軽い身のこなしで敵に的を絞らせない。

目の端に映った小さな軍人の剣をかわして反撃に出ようとしたその時。


頭上から人が軽やかに降ってきて、その斬撃を受け止める。

ぎぃん、と刀と刀がぶつかる音がする。



彼にとっては、見慣れた背中。


同じ素材の革の軍服。


「…ッ…ファイッ…!」


空色の瞳をちらりと彼へ寄越して、両手で握った魔法剣で目の前の敵を気絶させる。


「心配で、来ちゃった。」

戦いの最中に照れ臭そうに笑う彼女。

殺魔石の影響で少し辛そうだが、こんな中でも笑う彼女にほっと安心する。

手は止めることなく次の相手を受け止める。


「ファイ、後ろ!」

その声にナナセは高く舞い上がり、空中で一回転して敵の背後へ着地する。

そして深い空色の瞳で、魔術で作った青白く光る剣を振りかざす。



ステップを踏むような軽い身のこなしは二人ともに通じているが、ナナセの方が小さく小回りが利く。

そしてまた、魔術を織り混ぜた複雑な剣撃を繰り出す。

それは少女が大の男を倒せるほどの、そんな技術。


対する黒猫は俊敏さと華奢な身体に秘めた大きな力が敵に反撃を許さない。

魔術は介さないのに力負けてしてしまう、そんな強さ。


軽い身のこなしで跳び跳ねるナナセとルグィン。

時々帽子から零れ出る銀色は、隣で拳を振るう黒猫をひやひやさせる。

二人いればあっという間に敵が減っていく。


アズキとトーヤは増援に来た警備員達から防御魔法を使ってお互いを守る。


戦う彼らは、最後に残った指揮官を気絶させる。


ナナセは剣を持った片手を、ルグィンは素手の両手を下ろして、顔を見合わせて緊張を緩ませる。

誰も殺さずに逃げ出せそうで、ナナセはほっと安堵する。



「ルグィ…」

黒猫を見上げ、声を落とそうとした大きな帽子を被った少女を、突然彼は抱き締めた。

後ろから頭に手を回され黒猫の胸に飛び込むかたちになった少女の視界はもちろん遮られる。


「ッきゃ!?」

何が起こったのか分からない。


飛び出した少女の声は、急にピンと張り詰めた空気の中に場違いに響く。

< 180 / 331 >

この作品をシェア

pagetop