空色の瞳にキスを。
足を踏み出す度に革の帽子からはみ出てなびく銀髪。
「アズキ、トーヤ、飛べる?」
振り返りナナセが尋ねると、アズキとトーヤは頷いた。
背中からは自分が回復させた軍人の警備員がいる。
黒猫が足止めをしてくれているが、長くは持たないだろう。
「窓枠から飛んで!」
窓へと走りながらナナセが叫んだ。
唐突、且つ強引な手段。
「え、ちょっ!」
トーヤの慌て声が聞こえるけど、構っていられない。
「いくよ、1・2・3!」
自分が窓枠を乗り越え、アズキを引き上げるとそんなかけ声と共に宙へと体を投げ出した。
「きゃー!」
アズキは固く目を瞑って悲鳴をあげながら、魔術で飛ぼうと翼を出現させる。
天使のような、白い羽の翼。
トーヤも飛ぼうと、必死な顔で風の魔術を起こして落下を阻止する。
「飛べた!」
アズキがぱっと笑顔でナナセを見てくるから、ナナセはちょっとだけ笑えて。
でもちょっとだけ悲しくて。
─あたしのせい、か。
そう思ってしまっていると、キラキラしたアズキの瞳が目の前にあって、少し気が紛れた。
宙に静止して窓を振り返って待っていると、ルグィンが窓枠を蹴りあげてこちらへ飛び上がってくるのが見えた。
一回の飛び上がりで割と離れた場所にいる三人の元へと容易く飛んでくる。
空色の瞳と金の瞳が交わって、緊張していた二つの目が緩む。
「逃げるぞ。」
「…うん。」
黒猫と王女の言葉で、街から離れていく。
「くそっ、弾が当たらねぇ場所まで離れやがった!」
「こっちもダメだ!
魔法弾を飛ばしてみたが防御楯を張られる!」
「ちくしょう…!」
窓に群がる軍人たちは、闇に溶けた人影を必死に追い、銃を構え、魔術を使う。
その後ろから、ひとり分の存在感のある足音が聞こえた。
位の高さだけでは生まれない存在感。
「ミレーニさん…。」
「すみません。」
頭を下げる警備員のひとりも、黙ったままのナコに疑問を感じ顔をあげる。
警備員全体がナコのほうを見ている。
その目の前で、ナコの赤い瞳がちかちかと点滅を繰り返す。
「何が?
どうしたんだ?」
その上で尋ねると、警備員たちは皆いっせいに首をかしげ始める。
「…何がでしたっけ?」
「なぜ俺たちはこんなに集まっているんだ?」
「何が起きたんだ?」
「…さぁ。」
「じゃあなにも起きてないんじゃないのか?」
口々に話す男たちの話は偽りだが、彼らの仕草は嘘をついているようには見えない。
「じゃあ、ナコさん、失礼しました。」
「あぁ。」
皆散り散りにもとの持ち場へ歩いていき、ナコだけが窓際に残される。
一番偉い警備員の去った廊下の先を見つめて赤髪の男は呟く。
「赤目の狐の力を思い知れ。」
彼は錯乱魔術の使い手。
同じ異形のスズランやルグィンにも使えないが、この魔術は役に立つ。
先程王女に使おうとして阻止された魔術も、錯乱と攻撃の魔術。
─今は逃がしたが、今度は。
「…次会えば、必ず殺す。」
窓辺で紡いだ彼の言葉は夜の闇に染みていった。
「アズキ、トーヤ、飛べる?」
振り返りナナセが尋ねると、アズキとトーヤは頷いた。
背中からは自分が回復させた軍人の警備員がいる。
黒猫が足止めをしてくれているが、長くは持たないだろう。
「窓枠から飛んで!」
窓へと走りながらナナセが叫んだ。
唐突、且つ強引な手段。
「え、ちょっ!」
トーヤの慌て声が聞こえるけど、構っていられない。
「いくよ、1・2・3!」
自分が窓枠を乗り越え、アズキを引き上げるとそんなかけ声と共に宙へと体を投げ出した。
「きゃー!」
アズキは固く目を瞑って悲鳴をあげながら、魔術で飛ぼうと翼を出現させる。
天使のような、白い羽の翼。
トーヤも飛ぼうと、必死な顔で風の魔術を起こして落下を阻止する。
「飛べた!」
アズキがぱっと笑顔でナナセを見てくるから、ナナセはちょっとだけ笑えて。
でもちょっとだけ悲しくて。
─あたしのせい、か。
そう思ってしまっていると、キラキラしたアズキの瞳が目の前にあって、少し気が紛れた。
宙に静止して窓を振り返って待っていると、ルグィンが窓枠を蹴りあげてこちらへ飛び上がってくるのが見えた。
一回の飛び上がりで割と離れた場所にいる三人の元へと容易く飛んでくる。
空色の瞳と金の瞳が交わって、緊張していた二つの目が緩む。
「逃げるぞ。」
「…うん。」
黒猫と王女の言葉で、街から離れていく。
「くそっ、弾が当たらねぇ場所まで離れやがった!」
「こっちもダメだ!
魔法弾を飛ばしてみたが防御楯を張られる!」
「ちくしょう…!」
窓に群がる軍人たちは、闇に溶けた人影を必死に追い、銃を構え、魔術を使う。
その後ろから、ひとり分の存在感のある足音が聞こえた。
位の高さだけでは生まれない存在感。
「ミレーニさん…。」
「すみません。」
頭を下げる警備員のひとりも、黙ったままのナコに疑問を感じ顔をあげる。
警備員全体がナコのほうを見ている。
その目の前で、ナコの赤い瞳がちかちかと点滅を繰り返す。
「何が?
どうしたんだ?」
その上で尋ねると、警備員たちは皆いっせいに首をかしげ始める。
「…何がでしたっけ?」
「なぜ俺たちはこんなに集まっているんだ?」
「何が起きたんだ?」
「…さぁ。」
「じゃあなにも起きてないんじゃないのか?」
口々に話す男たちの話は偽りだが、彼らの仕草は嘘をついているようには見えない。
「じゃあ、ナコさん、失礼しました。」
「あぁ。」
皆散り散りにもとの持ち場へ歩いていき、ナコだけが窓際に残される。
一番偉い警備員の去った廊下の先を見つめて赤髪の男は呟く。
「赤目の狐の力を思い知れ。」
彼は錯乱魔術の使い手。
同じ異形のスズランやルグィンにも使えないが、この魔術は役に立つ。
先程王女に使おうとして阻止された魔術も、錯乱と攻撃の魔術。
─今は逃がしたが、今度は。
「…次会えば、必ず殺す。」
窓辺で紡いだ彼の言葉は夜の闇に染みていった。