空色の瞳にキスを。
トーヤは夜明けの淡い光に優しく縁取られた黒猫の横顔を見つめていた。

─この目じゃ、この振る舞いじゃ、丸分かりだな。


ぼぅ、と考えていると急に彼がこちらを振り向き、目が合ってしまった。


「「……。」」

男二人で、顔を見合わせて沈黙。

背後から聞こえる少女の明るい声が耳に入って、かなり気まずい。

いくらか静かに顔を見合わせ空を飛んでいると、黒猫が口を開いた。

それもかなり言いにくそうに。

「…お前、辛いんじゃね?
助けてやろうか。」

片手を無造作にトーヤの目の前に出してぽつり、と呟くように言った。


その姿はトーヤの想像していた首狩りの少年ではなくて。

冷酷少年と呼ばれる彼の口の利き方が結構意外で、きょと、と目を丸くする。


少年のその反応に黒猫の唇がひん曲がるのがトーヤから見てとれて、少しだけ頬が緩んでしまう。

─なんだ、普通の奴じゃんか。


トーヤがひとり思案に耽っていた間に、ついには帽子を深く被り顔を隠してしまった黒髪の少年。

それでも伸ばしたままの黒猫の武人の手。


正直風の魔力を長時間使うことにまだ慣れていなくて、それに殺魔石に魔力を奪われた体にはかなり辛い。

だからこの黒猫の気遣いに甘える。


「じゃ、お願いします。」

トーヤの明るい声を聞いて、黒猫が少年の方を向く。


「…腹立つ。」


一言言うと、自分の肩へ自分と変わらない背丈の少年を担ぎ上げる。


「おゎ!」

前置きもなしで突然担がれた少年は驚きの声を上げる。


黒猫はそんなトーヤを担いだまま急降下を始めた。

元々魔術を使わないルグィンの移動は、何かから何かへ高く飛び上がりナナセ達の高さまで飛んでいる。

ルグィンに気遣い低空飛行をするナナセたちだが、それでもルグィンは上下運動を避けられない。



それをちゃんと知っていてルグィンは高速で空を駆ける。


日々この方法で移動しているルグィンは構わないが、慣れていないトーヤは絶叫を繰り返す。

地面が急に近くなって、遠くなる。


「ちょ、待って、やめてー!」


そんな声が聞こえても、気にしないように黒猫は飛ぶ。

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