空色の瞳にキスを。
自分達を追い越し、今は遥か前で騒ぐ二人を見て少女達は穏やかに笑う。


「トーヤ、意外と怖がりなんだね。」

「そうなの、昔からね。

私の方が度胸あることあったりするよ。」

二人で顔を見合わせてくすくすと笑いあって、またナナセは柔らかな空色で小さな二つの人影を見る。

小さな笑みを含んだ声は、風を切って後ろに置いてけぼり。


「ルグィン、悪戯してる。

珍しいな。

トーヤのこと、気に入ってくれたかな。」

手を口元に目を伏せて銀の少女はひとりでくすりと笑う。



「…黒猫さん、イタズラしてるの?」

知り合ってまだ限りなく短く、全くそんな風には見えない先見の少女は隣の少女を見つめる。


その視線に気付いて、ナナセは黒猫を無意識に指差す。


「だって、あの目が笑ってた。」

キラキラした瞳でそう言われても、あんなに無愛想な少年の変化は難しくて。

「…へぇ…。」


それでも彼女が彼を大事に思っているのは伝わってくる。



こんなに優しい目をする親友をほとんど見たことないと、アズキは思った。


遠くの黒猫の少年を見て、ナナセはとびきり優しく微笑む。

その笑みが他の人に向けられるものとは違うことに彼女はきっと気付いていない。


トーヤと仲良くしてくれるかな、なんて目の前でこちらに笑いかける銀の少女。


銀に淡い夜明けの光が当たって、どこか幻想的な姿を作る。

その光加減で笑うから、いつもの彼女の笑みはまっさらだけど、どこか不思議な色をしていた。

彼女の笑みは、先見の少女の心を温かくする。


リョウオウで見たときの彼女より、今の彼女の方が自然で、アズキはナナセがぽつぽつと話すのを隣で聞きながら口元を緩める。



─本当に、悲しみに埋もれて人から逃げたままのナナセじゃないんだ…。

銀色の少女の変化は、全てを自分が成しえたわけじゃない。

その事実は悔しいものだけど、それを越えるくらいに堪らなく嬉しかった。


黒猫のおかげで、自分の友達は今笑っているんだと思うから。


だから、いつのまにかアズキは口に出していた。


「良かったね、黒猫さんがいてくれて。」


「うん。」

にこ、と微笑みを返してきた少女を見て、アズキは直感的に感じた。



─あの少年は、少女の中で特別なんだ、と。


彼女が気付いていなくても、それでも分かるその感覚。



この想いが彼女を揺るがすのは、もう少しあとのこと。

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