空色の瞳にキスを。
ナナセはアズキの優しい声に、また涙を溢す。


アズキは目の前で泣く親友を見て、また口を開く。


「お母さんとお父さんはきっとこの目のことを悲しんでくれると思うけど。

でも私はこの先見の力で、ナナセの力になりたい。」


唇をぎゅっ、と引き結んで、自分を真っ直ぐに見詰めてくる涙で濡れた、空色の瞳。

まだ迷いのある瞳を見詰めて、小さく微笑む。


「理屈じゃないの。


ナナセがこの先何をするかは私はまだ知らないけど、私はそれを手伝いたいの。


同じ世界を歩きたいの。


…これは、私の意志。」


自分を見つめる明るい茶の瞳は揺らがない。


その瞳の威力に、銀の少女は戸惑うように視線を泳がせる。


ナナセが答えられなくてつくる長い沈黙に、アズキが耐えかねる。

「だめ…?

私の意志は、受け取ってもらえない…?」


悲しそうなアズキの声に、ナナセはふるふると首を横に振る。

そして口を何度かぱくぱくと動かせて、声を出そうか躊躇いやっと決意したように声を出す。


彼女の声は小さく、掠れていた。


「…ねぇ、いいの?

後悔しても、いいの?


知らないよ?」


─最後の、境界線。


この問いに是と答えればナナセの世界に踏み込むと、アズキは悟った。


それでも、彼女は頷いた。

その瞳に、決意を秘めて。


「──うん。」


その答えに、またナナセが涙する。



─嬉しくて、悲しくて。

酷く嬉しいのは、あたしを信じてくれたから。

堪らなく悲しいのは、家族と引き離してしまう罪悪感から。


片手はアズキの手を握って魔力を送り続けたまま、ナナセはもう片方で溢れ出る涙を隠す。


そうして泣きながら俯く少女を、アズキはふわりと抱き締める。


「…ありがとう…。


許してくれて、共に歩いてくれて…、本当に、ありがとうっ…。」



くすり、と笑う息遣いがナナセのすぐ耳元で聞こえた。


「ナナセって、案外泣き虫よね。」


お互いの距離がお互いの心に、温かさをくれた。

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