空色の瞳にキスを。
サラとアズキが皆が集まるいつもの部屋で、再会を果たした。

母親2人は台所へと消えたためにここにはいない。



「おばあちゃん…。」


泣きっぱなしのアズキは彼女に手を伸ばして、祖母に笑う。



「アズキ。」

同じ背丈の2人は、向かい合ったままやはり涙ぐむ。

サラは末の孫の頬を両手で挟む。


アズキの隠していた左目を見つめ、悲しく微笑む。


「目覚めてしまったね、その力…。


世界を見つめる先見の力…。」


─アズキを神官にしたくなかったんだ。


2人を見つめるファイは、サラの泣き顔に彼女の思いを思い出した。



祖母の橙色の目と孫の赤い目が交差する。


アズキの血の色をした目を見つめて、サラは悲しそうに言った。


「知っているかい?

先見の才が強ければ強いほど、瞳は赤に染まるのだと…。」

サラの言葉に、アズキは目を見開く。


「銀、金…青は魔力が強いと言われる色。


それとは別に、色が能力を表すこともあるのさ。

…先見の力は血のような赤。

それに近いほどにその才能があるといえるのさ。」


後半は歌うように言って悲しさを紛らせたサラの声だが、アズキには泣いているように聞こえた。



「じゃあ私は…。」

それでも悲しさを押し殺してまで伝えようとしてくれる事実を、アズキは把握し始める。


「そう…。

お前は本当に大きな力を持っているのさ。

封じたかったが、封じられなかったなその力。



開いてしまったからには逃れられない。」


悲しみがこもったその声は、アズキの涙腺を崩壊させる。



「だからせめて…自分の意志で前へお進み…。」

その声音は、祈りに近くて。


アズキの心を震わせた。



「うん…。」


手を固く握りしめて、彼女は小さく頷いた。

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