空色の瞳にキスを。
その声は、芯の強さが伺えた。


「ルイスへ行ってアズキとトーヤが魔術をきちんと使いこなせるようにします。


命を狙われても一人で逃げられるくらいの高度魔術を使えるようになってもらいたいんです。」

さらりと彼女に口にされた言葉に、アズキはごくりと唾を飲み込む。


命を狙われる、逃げる、なんて普通のアズキは知らないことを隣の友は知ってると、少しだけ怖くなった。

ナナセと共に歩きたいと願っても、決意しても、まだまだ怖いことがアズキにはある。


「それがどういうことになるかは知っているね?」


嗄れてはいるが威厳のある老婆の声に、凛とした少女の声が返る。

「…はい。

魔術師は敬われ、また畏れられるのも知っています。

一度魔を知ってしまえば、今までのように魔力なしで生活するのは難しくなります。

学校に今まで通り行けるかも分かりません。」


─学校。

ハルカがナナセと知って、二人の首狩りに出会った頃から、もうそんなことはすっかり抜け落ちていた。


あの日常が、もう遠い。

今の描く未来は、あの頃には疎んでいたナナセといる世界だった。


それでも、行けなくなると言うファイの言葉にアズキは戸惑う。

─どうして、学校に行けなくなるの…?


友達だって、多くはなくてもいた。

「二人の魔力は並外れていますから、学校では疎まれるかも知れません。」

アズキの疑問に答えるように、ファイが答えを紡ぐ。


アズキとトーヤとが通っていたのは、魔力のない人が通う学校だった。


確かに、魔力が目覚めた級友を、それを羨んだクラスの男子が悪さをしていたことがあった。


その子がいつの間にか学校に来なくなったことをアズキは思い出して、納得する。


─あんなことする人がいるなんて思いたくないけど、そういう人もいるんだ。



「人を助けることも、傷付けることも簡単な魔術師。


相当高度な魔術師でなければ、無意識で使ってしまうのを防げないとも分かってます。」


アズキの隣で黒い瞳がまっすぐとサラを見つめる。

瞳は、揺らがない。


「でも、この道しかないんです。

このままじゃ、アズキは魔力に押し潰されていく。」


黒い瞳に星屑のような青がちらちらと輝いている。

唇をぎゅ、と引き結んだその顔は、まさしく決意の表情。


それを何秒か見つめてサラはため息をつく。


「そう、そこまで考えてくれているのか。

トーヤ、アズキ、お前たちはどうしたいんだい?」


話を振られた二人は顔を見合わせる。

それぞれの瞳にも、決意が映る。


トーヤが口を開いた。


「俺は、ナナセと同じ道を歩きたい。」


それに続いて、アズキも口を開く。


「私も、同じ。」

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