空色の瞳にキスを。
揺らがない、4つの瞳。

「もしなにもかも忘れて今までの生活が出来ると言われても、俺はそんなことしたくない。」

そんなトーヤの声に、アズキが続ける。


「私も戻りたくない。

…この先に見えた未来を、変えたい。」


それぞれの強い眼にサラは頷き、そしてまた口を開く。


「王女、この子達の願いを受けてくれないだろうか。

目覚めたこの子達の運命はせめてあなたに…。」


サラとナナセから厳かな空気が漂う。

ナナセは唾をごくりと飲み込んで、瞳を伏せ座ったままで頭を下げる。

「はい。喜んで。」

恭しく頭を下げる黒髪の少女は、どうしてか神秘に満ちていた。

誰も異論はないようで、ファイの言葉に頷く。


「さて、お前さんは何をするつもりなんだ?」

「あたし…?」

人差し指を自分の鼻へ向ける。


「そう、お前さんだよ。


アズキやトーヤの為、じゃなくて、あなたは何がしたくて今ここにいる?」


明るい黒の瞳が強張っていく。

薄いファイの唇が引き結ばれる。

ややあってから、ファイは口を開いた。


「あたしが追われる理由、ご存知ですか?」

予期していなかった問いに、目を丸くして老婆が答える。


「王殺しの濡れ衣ではないのか?」


「それもありますが…。

ルイの石ってご存知ですよね?」

黒髪の下で、黒が真剣な光を帯びている。

「あぁ。」


「あれは…確か…。」

サラが記憶を呼び起こそうと首をかしげる。

サラが首を捻り、部屋には沈黙が流れる。


その沈黙を破ったのは、ファイの凛とした声。


「…幸せを願った初代国王の祈りの石…。

その石は悪しき王女により奪われた…と…。」


ゆっくりと瞳を伏せてファイが口遊む。


「あぁ、それだ。

確か、現国王があなたを追うときに国中に出した文章だったな。」

サラが悲しそうな笑みを浮かべる。

その笑みに同調するようにファイが笑う。



「王城にある祈りの証の片割れである水晶。

あの水晶と対になるルイの石は、今も私が持っている。」


そう言うとファイは、黒髪の姿のまま、瞳だけを空色に戻す。

サラの目が向かい側で目を見張る。


ルグィンはその瞳の中に、小さな違和感を感じる。

向かいに座るサラも同じようで、彼女も眉を寄せて目を凝らしている。


違和感のもとは、黒髪の少女の左目に映った紺色の魔法陣。

ナナセの姿でいるときでもいつもは隠している、ルイの石の影響で現れる魔法陣。

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