空色の瞳にキスを。
「綺麗、なんて。
…嬉しい…。」

彼女が笑った顔がひどく切なくて、ルグィンは空色の瞳の奥を覗き込む。

「こんな髪、誰もない。
夜に煌めいて、日の光に輝く。」
いつも彼女のどこかにある余裕が無くなって。

─何でこんなに動揺してるの。


至近距離でのひどく綺麗な微笑みは、ナナセの心を揺らがせて。

「そ、そういえば…。」

ルグィンが隣で喋る度に騒ぐ胸を、話を変えることで落ち着かせようとする。

「そういえば、今日で4人でここへ来てから1ヶ月…だね。」

ルグィンの方を向いて、ぎこちなく笑う。

─露骨だったかな。

そんな思いも浮かんだけれど、それよりも話を変えることに必死だった。

柔らかい草を冷たい風の音がまた撫でる。
一面の草花に包まれて、二人の若者がそこにいる。
草を揺らしたその風は、二人の細い髪を靡かせる。

話についていけなかったのか、黒猫の少年が目をしばたたかせる。
黒と銀が二人の間を邪魔をして。

目を合わせたら、時が止まった。

いつもより少しだけ幼く見える、きょとんとした顔をして、首をかしげるルグィン。

相変わらず金に輝く瞳に、逸らそうとするのに逸らせなくて。
肩越しに二人見詰め合えば、先にルグィンが口元を微かに緩めて。

「そうだな。
ちょうどあの夜から1ヶ月、経ったよな。」

あの夜とは、大泣きして彼の胸で眠ってしまったあの日の事を指している。

それからまた沈黙が二人を包む。
彼と会話をすれば二人ともが言葉少なな為に沈黙が多く訪れる。

考える間をくれてゆっくりと言葉を紡がせてくれる独特の間はナナセは嫌いではなかった。

また一呼吸置いてから、ルグィンが口を開いた。


「決めた?」

答えを待つその顔が、あんまりにも優しくて、泣きそうになる。

きゅ、と唇を引き結んで空色の瞳を揺らしたナナセはまだ視線を外さない。
ゆっくりと口を開いて、言い出す決意が足りなくてまた閉じる。

その様子を急かさずに見つめる異形の少年。

優しい目をしてナナセが言い出すのをじっと待っている。

無表情の塊であるルグィンの表情の起伏を敏感に感じられるのは、彼女だけ。

─少しだけ崩れたその目元が、優しいとちゃんと感じられるのは、彼女だけで─…。


絡んだ視線を先に離したのは、ナナセだった。

逸らした視線は、高くて青い空へと投げられた。



「…決めたよ。」

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