空色の瞳にキスを。
決めた、と決意を露にした少女はゆっくりと微笑んで、また口を開いた。

「あの日…泣き疲れて寝てしまったあの夜の真夜中にね。
アズキと歌を歌ったの。

夜の空気にあたし達の声が消えていって、綺麗だったの。

幸せだったの。」

穏やかに笑う横顔は本当に幸せそうで。

草原に差し込む日の光は、彼女の風に巻き上げられた銀髪を輝かせる。

「今はちょうど戦争に駆り出されていない時期だからいいけれど。

二年前の東の国タムニーとの戦争の頃みたいな、あんな思いはしたくない。
辛い生活と、親しい人を失うんじゃないかって怯える生活は、皆にはさせたくないの。
その時のあたしの友達も、死んだの。」

偽りの姿だったけれどあたしは友達だと思ってる、と付け足したナナセの顔は、悲しみがまた影を落としていて。
悲しみの中でも雰囲気が暗くならないように精一杯彼女が笑うから、ルグィンの表情が険しくなる。

戦に駆り出された友との別れが突然すぎて、まだ癒えない傷があるということはその場にいなかったルグィンにも伝わってくる。

「一人しかいない肉親を失う経験をしたから、失う悲しさはちゃんと分かってるよ。
死んでしまった人たちを悲しむあの辛い場所を、ちゃんと見たから思うの。

あたしは貴族だけど、貴族じゃない目線で見たから思うの。

戦争なんかしちゃいけないって。
もう国の誰も失いたくないの。

幸せが、一番大事だって思うの。」

言葉が続くにつれて、弱々しかった彼女の声がだんだん強さを秘めてくる。

言い終えるとナナセはまた唇を引き結び、唾を飲み込む。

ナナセは深く息を吸って、一気に言った。

「あたし、この国の王様になりたい…!」

様々な思いを含んだその声は、冬の空気の中へと飛び出した。

国家の転覆を狙う声は、やけに色を持って、強く、凛と山の空気に染み渡る。

大きな事を言ったのに、案外それは二人にすぐに馴染んで。

思いの外簡単に言えてしまった自分の大きな夢に、言った本人が声の飛んでいった先を大きな瞳で見つめる。

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