空色の瞳にキスを。
声にファイが立ち止まり、ルグィンが声を潜めて続ける。

「こういうものは2人で動く方が自然だろ。」

黒いタキシードとは不釣り合いな黒い布の帽子を被ったルグィンが黒い偽の瞳を覗き込む。

「そんなことしたら、アズキたち二人になっちゃうよ?」

心配で堪らないという顔を見かねて、アズキが口を開いた。

「二人で回って?
ナナセ達の方がこういうこと得意でしょ?

私なら心配要らないよ。
だから、いってらっしゃい。」

アズキが二人に近づき、背中をトン、と押して小さな声で笑いかける。

「そうそう。
俺らはリクさんところ行ってるから。」

トーヤが後押ししてやっとファイが首を縦に振り、二人を振り返りつつルグィンに連れられ去っていく。

ファイとルグィンはゆっくりと周りを見渡しながら、人の間を縫って歩く。

─あ、あの人は誰だっけ。

彼女が目に止めたのは、藍の短髪の体格の良い男。
盛装をしているので分かりにくい。
だけど、微かに覚えがあって。

─二年前くらいにあたしを狙って追いかけてきた人だ。

彼が北の領主だと思い出して、息を吐いて視線を外す。

─あの人、軍の人でもあるんだったわ。

また前を向くが、横から視線を感じて見上げれば帽子の隙間から覗く金の瞳を捉えてしまう。

「…。」

「…。」

お互いが黙るから、声に詰まって先に視線を逃がしたファイ。
逃げてもなお、隣からの視線を感じる。

白い華やかなテーブルに視線を移して、彼女は口を開いた。

「ルグィンがこういうところにも出られるなんて意外だわ。」

瞳を伏せてぽつりと冗談混じりに言う声を、ルグィンが拾い上げる。

「それ、どういう意味だ。」

低い声でも、彼の目が笑っていて。
金の瞳の中でファイが小さく笑う。

「俺たちは軍の兵器として顔見せしないといけない時もあったから。

作法は全部、その時の文官からだな。」

内容が内容だからかルグィンは周りを憚るように、溢すように話す。
受け答えを一度してしまえば、案外普通に接することができて、ファイは内心ほっとする。
会場を視界に入れれば、テーブルに料理を並べる使用人の姿が目に留まった。

後ろへと流された中途半端な長さだけど綺麗な金髪の男。

彼が洗練された手つきで整えていく様が、どこか見覚えがあって。

─あれ…?

もう一歩のところでピンと来なくて、じっと見つめていると、後ろから低い男の声が飛んできた。

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