空色の瞳にキスを。
「おや…その帽子、その黒髪。
君はまさか…。」

黒い二人に投げ掛けられた低い威圧感を含んだ男の声。

ルグィンはその声に反応して立ち止まる。
声のした方へと首を回しながら、黒髪の少年は答える。

「あ、大尉。
お久しぶりです。」

深く頭を下げた隣の少年の動きから、ファイは声をかけてきた人物が格上だと知る。

「本当に久しぶりだな、シュン。
お前がルイス周辺の任務についてから会ってはいなかったな。

お前は元気か?」

ファイにとって低いその声は初めて聞く声で、ゆっくり、警戒しながら振り向いた。

目を上げると、一人の体つきの良い中年の男と、後ろに控えた細身の背丈のある男。

盛装をした黒髪の側仕えらしき男も、軍官らしき雰囲気を放っているその少し筋肉質のその中年の男も知りはしないが、なにか引っ掛かった。

だけれどもそんなことを考える余裕もなく、品定めするような中年の体格の良い男の目が自分を舐めたのにファイは気付いた。

「こちらは…?」

「あぁ、友人のファイです。」

さっとルグィンが紹介してくれて、こちらに視線を寄越すから、ファイも黒髪をゆっくりと下げた。
名を告げて軽く会釈はするが、前には出ないでいる黒髪の少女を見て、何を考えたのか男はルグィンにニヤリと卑しく笑いかけた。

「珍しいなぁ。
へぇ、お前が女をつれてくるとは。

お前が溺れた遊女か?」

声がねっとりとした湿り気を含んでいて、言葉にも声音にもファイは気持ちの悪さを覚えた。

「まさか。違います。」

上官の前、無礼なことを出来ない黒髪の彼は、怒りを言葉に込めないように気を付けるのに精一杯だった。

それを知っているかの如く、上官の男は馬鹿みたいに清々しい笑みを貼り付けて部下を笑う。

「ほぅ…じゃあ恋人か?

けれどお前達はそんな容姿なんだからろくな人間に愛されはしないだろう?」

周りの人間は穏やかな談笑を楽しんでいるのに、ここだけは別世界。


穏やかな周りの雰囲気が霞むくらいの、陰気さを放っている。

< 266 / 331 >

この作品をシェア

pagetop