空色の瞳にキスを。
嘲笑うこの声は、軽やかな笑い声に掻き消されることなく二人の耳にはしっかりと届く。
馬鹿にする男の声は、周りの人がすぐに拾って、聞き耳を立てている。

公衆の面前で部下を罵倒する事が楽しいとでも言うように、上官は顔を輝かせてまた口を開こうとする。

明らかな嫌味を言って見下すことを楽しむ意地の悪さに、ファイは耐えかねて口を開く。

「軍官様、御期待に沿えず申し訳ございませんが、このルグィンとは仕事仲間の間柄でございます。」

隣で友人が馬鹿にされたことに動じず、純粋無垢な笑顔に乗せて、言う異形の部下の友人だと言う少女。

「ナナセを捕まえる仕事を中心に首狩りの協力をさせていただいております。」

簡単なお辞儀ではなくて、かしこまった宮廷式のお辞儀をする少女。

呆気にとられていた軍官だったが、少女を見てにやりとまた卑しく笑った。

「女、やるなぁ。
今回は俺の敗けだ。調子が狂った。」

それには言葉を返さずに、淡い笑みを称えてまた軽くお辞儀をする少女。
それを見て、軍官は二人の側を通り過ぎ、次の知り合いに声をかける。

それに付いていく側近らしきの細身の男。
軍官が通り過ぎた時よりもファイの近くを通り過ぎていく。

目線を感じて頭を上げれば、赤い側仕えの男の目がこちらを見下ろしていた。

軍官の後ろから刺すような強い目で見られていたのは、気のせいではなかったとファイは思った。

二人が嵐のように去った後、ルグィンが隣のファイに小さく頭を下げた。

「…悪かった。」

「ううん、気にしないで。」

にこり、と見上げて笑う笑顔はまだ少しひきつってはいたが、ルグィンはこれ以上声をかけられなくて見なかったことにした。


「…お前、黒猫のルグィン?」

今度は見るからに戦士という男二人が近寄ってきた。
体つきは大人のものだが、まだ大分あどけなさが残っていて、年は自分達とそう違わないように見えた。

答えないルグィンに二人は詰め寄ってキラキラした瞳で言う。

「俺、最近国に雇われたばかりの首狩りなんですが、貴方に憧れているんです!」

「噂で聞いています。
強くて誰にも負けないって!」

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